地震対策は筋・骨格系を強化するような耐震の他に、制震、免震があります。
今回は制震にも免震にも用いられるショックアブゾーバー(ダンバー)についての話をします。
ショックアブゾーバーはゆっくりした揺れに変わった建築物を、早く止めるためのエネルギー吸収装置としての役割を持っています。
ショックアブゾーバーは大きく2つのものが組み合わさって構成されています。
①バネなど弾性要素で動きを跳ね返すもの
②液体などの粘性要素で、動きを吸収するもの
①は地震によってバネが伸ばされ、それが縮むことで揺れと逆方向に建物を引っ張り、建物内が揺れないような仕組みです。
ただしこのバネの仕組みだけだと、揺れという動きがなかなかなくならず、建物は揺れ続けてしまいます。
そこで②の動きを吸収するものが必要となるのです。
②は地震の揺れでバネが伸び縮みする際の抵抗となります。
地震によって10の力でバネを伸ばすところが②によって8にとどめ、縮む勢いをさらに減らして5に...といった具合です。
ちなみにショックアブゾーバーは車やオートバイのサスペンションにも使われています(下の写真)。
路面の凸凹による振動を吸収して車体に伝えず、快適に運転出来るようにしています。
サスペンションの性能が劣化すると、車が揺れ始めるとモワンモワンと長く続いてしまいます。
これはショックアブゾーバーの、動きを吸収する作用が弱まったために起きるのだそうです。
さて、人体でショックアブゾーバーの役割を果たすものは何なんでしょうか?
人体の60%は水分ですから②の粘性を持つ部分は多分にあります。
また弾性組織と言われるものも沢山あり、①の特性を有しています。
ですから身体の成り立ちから見ると、全体がショックアブゾーバーとしての役割を持っているとも言えるでしょう。
そんな中で特筆されるのは筋肉(及び腱)です。
筋肉には①と②の要素両方を兼ね備えた粘弾性という性質があります。
また筋肉は意識してトレーニングをすることで様々にカスタマイズ、コントロールすることが可能です。
人体で①②の要素を持つ組織で筋肉ほど意識して変化させることの出来る組織は他にありません。
つまりトレーニングのやり方次第では筋肉にショックアブゾーバーとしての大きな役割を果たさせることが出来るのです。
そしてフルスイングをしても軸がブレず、繰り返しても故障しないような身体にしていく可能性があるのです。
筋肉のショックアブゾーバーとしての能力を高めるトレーニングは、また回を改めてご紹介いたします。
次回は免震装置の主役で建物と地面を“絶縁”する部分にフォーカスして、身体の話をしたいと思います。