今回は体幹シリーズを続ける上で不可欠な、基本的な解剖の話をします。
まず関節とは骨と骨がつながっている部分のことを言います。
この関節について、あまり知られていないけれど非常に重要なことを一つ。
片方の骨が動き、もう片方の骨は安定して動かないのが基本的な、正常な関節の動き方となります。
図の白い矢印は骨の動く方向、黒い矢印は関節面の運動です。
上の図も下の図も動く骨が右側、動かない骨が左側にあります。
骨の形が逆転している(関節によって異なる)ことがお分かり頂けるかと思います。
肩関節は端的に一つの関節を示す場合と、広義で複数の関節をまとめて指す場合があります。
広義の肩関節は図にある5つの関節すべてを含みます。
①胸鎖(キョウサ)関節
身体の前側にあります。肋骨(ロッコツ)前側の間にある縦長の胸骨(キョウコツ)と鎖骨(サコツ)で構成されています。胸骨に対して鎖骨が動きます。
②肩鎖(ケンサ)関節
背中の肩甲骨(ケンコウコツ)の外・前側と鎖骨の外側がつながった関節です。
靭帯(ジンタイ)での補強が強いため他の関節と比べて動きは小さくなります。
③肩甲胸郭(ケンコウキョウカク)関節
背中の肩甲骨の内面と肋骨の間にあります。肋骨の上を肩甲骨が滑るように動くのが基本だと考えて下さい。
④上腕肩甲(ジョウワンケンコウ)関節
肩甲骨の外側と上腕骨(ジョウワンコツ)の付け根がつながるところ。
肩甲骨に対して上腕骨が動きます。
骨による支えが小さい分、筋肉によって支えられています。そのため人体の中で一番大きく動くことの出来る関節です。
また筋肉による制動がうまくいかないことでも簡単に痛みや機能障害が出てしまいます。
⑤第二肩(ダイニカタ)関節
上腕骨と肩甲骨のところのもの。常につながっているところではないため解剖学的な関節ではなく、機能的な関節とされています。
ここでは本論からそれるため、この程度にします。
狭義の肩関節は④のみを指します。
分類の仕方にもよりますが、広義には①~⑤すべてを以って肩関節と言います。
歳を取ると共に腕(肩)を使う動作に変化が生じるという報告があります。
それは上腕肩甲関節に頼って他の肩の関節の貢献度が低くなるというものです。
そしてこれが四十肩・五十肩の一因になるそうです。
日常生活でもスポーツにおいても肩は大きく動いた方が良いですよね。
そのためには④上腕肩甲関節だけでなく、①~⑤の関節全てがしっかり協同して大きく動かせるようになる必要があります。
またこれが四十肩の予防にもなります。
①~⑤の関節は複雑に協調・連動して肩としての役割を果たします。
したがって明確にどこが体幹部分との境界線(免震構造で言うところの絶縁部分)となるか言えないところがあります。
肩のそれぞれの関節は身体の中心に近い骨が安定して、これに対する骨が大きく動く構造になっています。
つまり体幹に近いほどブレず、身体から離れたところほど大きく動く方が身体本来の能力を発揮出来るということです。
これが体幹が強いメリットと言えるでしょう。
こうしたことも予備知識として持って頂くと、体幹シリーズ本編もご理解頂けるかもしれません。
今後も体幹シリーズは展開していきますが、折を見てこうした番外編を多々折り込んで少しでも分かり易いものにしていきたいと思います。