院長の独り言

院長の独り言
8.応援メッセージ

1.岩手県水泳界の現状

3月11日、東日本大震災がありました。これによって日本中が大きな被害を受けました。 私が国体トレーナーをしている岩手県の水泳界も大きな被害・影響を受けています。
岩手では新年度になった段階で水中練習を再開したチームが増えてきました。 最近では通常の練習を再開したチームも出始めたと聞いています。 しかしプールが地震や津波で壊れたり無くなったり、エネルギー事情でプールが使えないところもあります。 これらの事情によって水中練習再開の目途が立っていないチームがまだまだあります。
また県からの強化費も今年は震災復旧費用がかさむために予定より減額されてしまうそうです。 強化費が減ると合宿日数が減るなど競技力向上の大きな障害となります。
さらに選手・コーチが練習に集中したくても出来ないような空気があるそうです。 これは目に見えにくい影響ですが、もしかしたら一番深刻なことなのかもしれません。

今年の競泳インターハイは、地震以前に岩手県で開催することが決まっていました。 震災後の現段階でその決定は変わっていません。 すなわちそれはコンディションが良かろうが悪かろうが岩手県の選手がインターハイに出場するということを意味します。
元々岩手県は競泳が強い県ではなく、全国大会で勝負出来る(決勝に残る)ような選手が毎年居る訳ではありません。
しかし近年東北大会の学校対抗で盛岡南高校が何度も優勝しています。 インターハイをはじめとする全国大会出場者数も増えています。 岩手県は少しずつですが確実に力をつけてきていました。
震災前、今年はインターハイで複数人が決勝進出し、すべての種目で他県の選手に見劣りしないだけの泳ぎが出来るという 手応えを感じていました。だから震災が与えた影響は大きな痛手となりました。
競技スポーツもレベルの高いところになると、ちょっとしたことでパフォーマンスが大きく下がってしまいます。

選抜高校野球で東北高校は頑張って素晴らしい試合を見せてくれました。 しかし東北ナンバーワンの超名門校が想像以上の大差で1回戦負けしてしまいました。 これを見ると競泳のインターハイで岩手県勢が苦戦してしまうのも想像に難くありません。

2.選考会で感じた競技スポーツの雰囲気

4月9~11日に浜松で開催された2011年度競泳国際大会派遣選考会(選考会)で鹿屋体育大学に帯同してきました。 ただ今回は震災のこともあるのであえて岩手県のユニホームで大会に臨ませて頂きました。
すると「地震、大丈夫でしたか?」「被害はなかったですか?」と声をかけて下さった方がたくさんいらっしゃいました。 有り難い限りです。その度に知っている範囲の事情をお話しました。私自身現在東京23区在住在勤で停電の影響も なく、気恥ずかしい感じもしましたが…

この大会は東日本大震災のチャリティー大会となっていました。ただ、選手にとっては非常にプレッシャーのかかる日本 代表選手選考の大会でした。そのためチャリティー大会と言いながら震災のことなど感じさせない競技スポーツ・大舞台 特有の厳しい、重苦しい雰囲気が選手を包んでいました。
この大会に出る選手が持ち合わせるような競技に対して真剣に、集中して、真摯に取り組む雰囲気が、今の岩手では考え られないと岩手のコーチが言っていました。 日常生活がままならない状況で、生活を犠牲にしてまで水泳を頑張るというのは、被災地の常識から外れてしまうのは 当然なことかもしれません。

ただそんな岩手県でこの夏、ガチンコの競技スポーツであるインターハイが行われます。 全国の選手はこの試合に全てをかける勢いで臨みます。 岩手の選手・コーチ達がこのままの状況でインターハイを迎えたら、どうなるでしょうか。 被災者を元気づけるために岩手県開催をする意味があるのかもしれません。 しかし地元の選手が活躍しないで大会会場、岩手県、更には日本が盛り上がるでしょうか。 地元の選手がちょっととでも善戦し、あわよくば優勝するようなレースが出来た方が被災された人達を勇気づけるのではないでしょうか。 現状を身に染みて分かっていない、被災者ではない人間の言う独りよがりかもしれませんが。

選考会が行われたのは浜松、古橋広之進記念プールでした。 古橋さんは言わずと知れた、戦後日本を水泳で盛り上げ、勇気と希望を与えてくれた水泳界が誇る国民的英雄です。 今回の選考会がこの古橋広之進記念プールで行われたのは何かの縁でしょうか。
インターハイで岩手の選手が活躍し、岩手が元気だとアピール出来る大会となることを心から祈っていますし、全力で そのサポートさせて頂きます。

3.メッセージ

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選考会では日本代表経験者で面識のある現役スイマーにお願いして、岩手県のスイマーに向けてメッセージを頂きました。 写真がそれで、岩手県国体水泳チームの白色のポロシャツに書いて頂きました。
23名の日本代表経験者が時間をかけ、言葉を選んで、岩手のスイマーのことを考えてメッセージを書いてくれました。 写真はクリックで拡大して見えます。見にくいかもしれませんが一人一人のメッセージを見てみて下さい。 非常に心がこもっていて、素晴らしいメッセージばかりです。
岩手県のスイマーにトップスイマーの心意気が届くことを願っています。
そして被災した現状を踏まえた上で、インターハイで結果を出す気持ちを持ってくれたら嬉しい限りです。 選手自身がもう一度アスリート本能を取り戻してくれたらと思います。

非常に重要でプレッシャーのかかる大会期間中、快くメッセージを書いてくれた選手の皆さんにこの場を借りて厚く御礼申し上げます。 なおこのポロシャツは、県合宿やインターハイでの控え場所などインターハイで戦う岩手県スイマーの見えるところに掲げる予定です。

4.追加情報

岩手県ではインターハイを開催するプールが無事でした(エネルギー事情で当面使用出来ませんが)。
しかし宮城県水泳界の震災による被害は一番酷いそうです。 核となるプールは被災して使用できない状況です。 今年度水泳強化事業も大会開催も見通しが立たず、中止か未定ばかりだそうです。
宮城県では内陸部のみならず沿岸部にも強いスイミングクラブがありました。しかし津波に流されたため撤退が決まったクラブがいくつかあると聞きました。

私は岩手のトレーナーなので岩手のことを中心に書きましたが、他の被災地も大変な状況であることを気に留めておいて 頂けると幸いです。

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